「生きる」

教員時代の思い出に家庭訪問の際に、訪問先のご家族に人間模様を感じることがあった。

40年以上も前だから現在とは大きく社会環境も変化している。家庭訪問は、普通小学生や中学生までであるが、たまたま高校生の家庭訪問があった時代だ。女子高だったので、気を遣うことが多かった。

以前コラムでも少し触れたが、太った生徒が家庭に行くと家族全員が太っていた。帰りがけに柱を見たら、「どすこい!!」と文字が刻まれていた。笑いに耐え切れなくなり急いで挨拶して帰った。

東武電車に乗ろうとしたら何やら親子で路線の駅名が載っている看板をしきりに見ている。子どもが親に駅名を教えている場面に出くわした。どうやら母親は文字が読めないようだ。娘が真剣に教えていたのだ。その光景になぜか涙が込み上げてきた。よく見るとその娘は、私が勤めている高校の生徒だった。

日本人は識字率は世界でもトップクラスだ。明治天皇のお蔭で教育制度が制定され、日本人は文字を読むことが出来るようになったことを思い出した。

授業では漢字の読み違いで「熱海(あたみ)」を”ねっかい”と呼んでいた。偏差値が低い生徒たちが多かったが今を一生懸命生きていた。チェッカーズの「涙のリクエスト」が人気を博していた時代である。

古き良き時代はみんなが一生懸命であった気がする。今の時代と何が違うのだろか。少子高齢化の時代で、今何をすべきなのか、考え続けたい。